会計士・経理の業務に最低限必要なExcelスキル「関数」7個
監査法人で働く若手スタッフや経理は、Excelに触れる機会がとにかく多いです。
今回は、特に監査法人の定期採用・中途採用の若手スタッフがいち早く業務に慣れるために、
最低限知っておきたいExcelスキルとして、まず「関数」を7つ紹介します。
本記事の対象は「かなりの初心者向け」ですので、社会人経験のある皆様には当たり前と思われる方が多いかもしれません。
なぜ監査法人の業務でExcelスキルが重要か?
冒頭にも書きましたが
監査法人で働く若手スタッフは、Excelに触れる機会がとにかく多いです。
なぜなら、現代の監査調書は、ほぼ電子調書(つまり、Excel,たまにWord)であり、
調書作成にExcelは必須であるためです。
Excelの操作がままならないと、本質である監査手続そのものに十分な時間をとれないばかりか
調書の作成が追い付かず、必要以上に残業が増えてしまいます。
実際に、ExcelをはじめとしたPCスキルの不足で、単純作業が片付かずに悩む若手の方を多く見てきました。
私も新卒の頃は、かなり苦しめられました。
今回は、無駄な残業を減らし、業務でスムーズに立ち上がるために
実際に業務内で使用した関数を棚卸し、頻度の多いものを7つピックアップしました。
=SUM()
何をする関数か?
セルの数値を合計する関数です。
ほとんど全ての方がご存知だと思います。
例えばこのように、E6セルに
「=SUM(E3:E5)」と入力することで、A~Cの合計の125が算出できます。
何のために使うか?
実務の現場では、仕訳データや試算表などの会計資料
PL/BS/SSなどの財務諸表の合計値に間違いがないかのチェック
をはじめ、使わない日はありません。
どう使うか?
今回のポイントはココです。
SUMに限らず、Excelで範囲を指定する際は、
指定範囲のズレに気を付ける必要があります。
例えばこのように、SUMで算出した合計値を式のままコピーして他のセルに持っていきたいとき、
=SUM(E3:E5)のような書き方のままだと、コピー元⇒コピー先の距離だけ、セルの指定範囲がズレます。
この場合、下に2つズレるので、参照する範囲が(E5:E7)となってしまいます。
これを相対参照と呼びます。
参照する範囲をズラさないためには、絶対参照という方法を使います。
これは、固定したいセルの前に”$”を付けることで、式をコピーしても範囲を固定できる方法です。
=SUM($E$3:$E$5)で、(E3:E5)が完全に固定されます。
=SUM(E$3:E$5)で、(〇3:〇5)が固定されます。
行の範囲を固定して、他の列で式を使いたいときに利用します。
=SUM($E3:$E5)で、(E〇:E〇)が完全に固定されます。
列の範囲を固定して、他の行で式を使いたいときに利用します。
直接$を書き込むのは時間がかかるので
セル該当部分(「F2」キーでセルを編集)の中で「F4」キーを押すことで、
絶対参照の設定をするようにしてください。
=MAX(),=MIN()
何をする関数か?
MAXは指定した範囲の最大値
MINは指定した範囲の最少値
を算出する関数です。
何のために使うか?
「監査の限界」という言葉があるように、使えるリソースには限りがあるので
重要性の基準値や、(僅少)許容金額というものを設定して監査手続を実施しますが
その際にMAXやMINを使用するケースがあります。
どう使うか?
基本的には、SUMと同じ使い方です。
参照のズレが起きないように、必要に応じて絶対参照を使いましょう。
=ROUND(),=ROUNDDOWN()
何をする関数か?
ROUNDは指定した数値を四捨五入する関数
ROUNDDOWNは指定した数値を切り捨てする関数
です。
桁数を引数として指定します。
0なら、小数点第一位で =ROUND(11.65,0)⇒12
1なら、小数点第二位で =ROUND(11.65,0)⇒11.7
-1なら、十円未満で =ROUND(11.65,-1)⇒10
プラスとマイナスに注意です。
何のために使うか?
例えば、決算短信などの開示書類の数値は
実務上、百万円未満の端数を切り捨てするのが一般的です。
こうした数値チェックや、減価償却費の検討など、様々な用途で利用されます。
どう使うか?
四捨五入や切り捨てをする単位を間違えないようにするのがポイントです。
=VLOOKUP()
何をする関数か?
一言で表すと、列の検索をする関数です。
特定の値を列で検索して、当てはまった行の〇〇番目のセルを表示します。
=VLOOKUP(検索値,調べたい列を左端にしたセルの範囲,検索したセルから右に〇〇番目か,完全一致か近似一致か)
という形で上記のように指定します。
何のために使うか?
とにかく様々な場面で使います。(適当)
どう使うか?
完全一致の設定を忘れないようにしてください。
また、検索した値の右側にあるセルしか検索できないので
VLOOKUPで検索できるようにExcelの構成に気を付けてください。
ちなみに=INDEX(MATCHの合わせ技を使えば、左側の検索も可能です。
=〇=〇(イコール)
何をする関数か?
数値の一致チェックを行います。
関数ではありませんが、数値が一致しているかどうかを確かめるのに使います。
稀に=IF(〇=〇,TRUE,FALSE)のようにIF関数を使う方を見かけますが
そんな必要は全くないので、こちらを利用してください。
何のために使うか?
数値チェック全般に使います。
どう使うか?
特に留意点はありません。
=SUBTOTAL()
何をする関数か?
色々な集計ができるのですが、
表示しているセルの値を合計する
小計を除いたセルの値を合計する
ために使うことが多いです。
このような形です。
“9”は、SUM(合計)集計をする場合に指定します。
何のために使うか?
例えば、フィルタで特定の行(勘定科目など)の合計値をチェックする場合
に使われます。
どう使うか?
特定の条件で合計値を求めるには、SUMIFなども使われますが
SUBTOTALの方が使用頻度は高いと感じます。
AGGREGATE関数という、SUBTOTALの上位互換がありますので
SUBTOTALに慣れたら使用してみてください。
=COUNTIF()
何をする関数か?
特定の条件に一致するセルの個数を抽出する関数です。
何のために使うか?
例えば、仕訳テストをExcelで行うとします。
仕訳摘要欄に「誤り」という言葉が含まれる仕訳は、仕訳誤りを装った不正仕訳の可能性が高いので、抽出して検討するとしましょう。
同様に、摘要欄が空白の仕訳も、実態が伴わない不正な仕訳の可能性が高いので、抽出して検討するとします。
その際は、このようにCOUNTIFを利用します。(仕訳データは簡略化しています)
どう使うか?
“*誤り*”のアスタリスクは「ワイルドカード」と呼ばれ、「含む」検索をするときの書き方です。
この書き方をすることで、仕訳摘要欄に「誤り」という文字が含まれるセルを網羅的に抽出することができます。
COUNTIFは、この「ワイルドカード」が使える数少ない関数なので、応用範囲は幅広いです。
関数はExcel作業効率化の最初のステップ
以上の7つの関数を理解して使えるようにしておけば
Excelを使った実務で人より大幅に遅れをとることはないはずです。
Excelは作業効率化にかなり関係するので
サッサと習得して、作業時間を最小限に減らしていきたいですね。
非監査業務や、コンサルティングファーム等での業務となると
覚えるべき関数はもう少し増えていきます。
そちらはまた別の機会にまとめていきたいと思います。
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