【監査論のお話?】ますます監査法人の高付加価値化が求められそうです

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【監査論のお話?】ますます監査法人の高付加価値化が求められそうです

 

朝日新聞のこのニュース、ご覧になりましたか?

決算「不適正」なら、監査法人に説明責任 金融庁方針 | 朝日新聞デジタル

 

記事から一部抜粋します。

上場企業などが事業年度の決算でつくる有価証券報告書で「お墨付き」となる監査法人の意見について、「不適正」などの場合は根拠を示すことが求められることになった。監査法人守秘義務をタテに説明を拒む例が多かったが説明責任を明確にし、決算の透明性を高める。

引用:朝日新聞デジタル(https://www.asahi.com/articles/ASM1Q4VZZM1QULFA014.html)

 

不適正意見などの場合は、守秘義務を解除する正当な理由があるとして、監査法人に十分な説明が求められるという方針が発表されました。

 

「会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会」報告書

ニュースで触れられている「金融庁方針」というのは、こちらの報告書のことです。

「会計監査についての情報提供の充実に関する懇談会」報告書の公表について

 

詳細は実際に読んでいただきたいのですが、ざっくりまとめると以下のような趣旨です。

・監査報告書の標準化(テンプレ化)が進んだため、監査法人が何をいったいやっているのか分かりにくいと指摘がある

・対応して、「監査報告書の長文化(透明化)」の取り組みが始まっている

・監査報告書の充実だけでなく、監査人からの説明や情報提供も大事である

・無限定適正意見以外の場合は、特に監査人からの説明や情報提供が重要なので、そのための環境整備を整えるべき

 

説明や情報提供とはいったい何をすることなのか?

 

では、説明や情報提供とは具体的に何なのか?と思いながら報告書を読んでいくと

・監査報告書の「意見の根拠」区分に十分かつ適切な説明を記載することを前提として

監査報告書の提出後、財務諸表の利用者から疑問が提起された場合などは

・株主総会での意見陳述

・企業が設ける対外的な説明の場に監査人が同席して説明

などを行い

・口頭で説明した部分については、書面化して公表する

 

などを検討するべきである、と(ざっくり)書いてあります。

 

「監査報告書の長文化」から求められる監査法人の説明責任

ところで、Key Audit Matters(監査上の主要な検討事項)という言葉はご存知ですか?

KAM(カム)と呼ばれたりします。

 

この報告書が発表される前に、上記で記載した通り、そもそもの流れとして、監査報告書の長文化という動きが始まっていました。

 

監査報告書の情報価値・付加価値をより高めるために、監査上の主要な検討事項に関する情報を盛り込もうという流れで、ヨーロッパでは着々と導入が進んでいます。

 

2018年4月に、公認会計士協会が発表した資料がありますので、共有します。

監査報告書の長文化(透明化) | 日本公認会計士協会

 

KAMの試行例はこちらです。

監査報告書の透明化 KAM試行の取りまとめ | 日本公認会計士協会

 

EY新日本は、韓国でのKAMの導入事例(実際の記載例を含む)を記載しています。

韓国におけるKAM(Key Audit Matters) の導入事例

 

監査論に出るかも?守秘義務の解除事例

倫理規則には、守秘義務の解除事例として以下の3つのパターンが列挙されています。

 

一. 依頼人からの守秘義務の解除の了解が得られている場合

二. 法令によって守秘義務の解除が要求されている場合

三. 守秘義務が解除される職業上の義務又は権利がある場合

 

監査論では、守秘義務の解除事例は頻出論点ですね。

 

一方、今回の報告書には

監査人が、計算書類等の法令・定款適合性に関する監査役等との意見不一致の内容及びそれが生じた理由、さらに、監査役等の意見にもかかわらず自己の意見が正しいと考える理由を説明する場合に関しても、必要な事項を述べることは、「正当な理由」に該当すると考えられる。

出典:金融庁ウェブサイト(https://www.fsa.go.jp/singi/jyouhouteikyou/siryou/20190122/01.pdf)

と記載されています。

 

短答式試験で

「監査人が監査役等との意見不一致の内容及びそれが生じた理由を説明することは、守秘義務が免除される正当な理由に該当する」

といった正誤問題が出てきそうな雰囲気がいかにもしてきそうですね。

 

 

工数削減と高付加価値化の板挟みで、監査の現場は正念場

 

さて、ニュースの話に戻ります。

監査報告書による文書のみの充実だけでなく、追加的な説明についても今後監査法人には求められることになっていき、より監査業務の付加価値化への要求は高まっていきます。

東芝問題などで度重なる不正看過事例があったことにより、世間の風当たりが今厳しいことも要因であることは否定できないでしょう。

 

こうした監査の高付加価値化と同時に、監査の現場では効率化も強く求められています。

より少ない工数でより高付加価値の監査を実現しなければならないという現在の監査チームは、正に正念場だと思います。

 

こうした監査の効率化と高付加価値化を同時に実現するには

・ITの活用

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・監査手続の標準化

・リスク評価と手続の削減

といったトップアプローチのみならず

 

実際の監査手続・調書を知っている現場メンバー個々の業務の効率化

例えば

・単純作業の最小化、高速化

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・重要な判断業務を行うための専門知識の研鑽
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・スムーズなコミュニケーションの徹底
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といった、ボトムアップのアプローチも必要不可欠と感じます。

 

 

今後2~3年で、監査業務はどのように変化していくのか、非常に見ものですね。

というわけで、今回はニュースと雑感をお伝えしました。

 

 

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