【簿記】ざっくりイチから学ぶ管理会計論その2【費目別計算】
個人的に管理会計論を初歩の初歩からおさらいしたいと思ったので、自習ついでに開講します。
前回の概要の続きです。
対象は
・簿記2級~1級受験生
・公認会計士試験入門期の受験生
・管理会計論を完全に忘れており、おさらいしたい人
実務に役立つようなことは殆ど書いていませんので、ご了承ください。今回は費目別計算。
費目別計算とは
そもそもの原価計算って、製品を作るのにかかった費用を算出するのが目的ですよね。
ではその「費用」って何か?これをまず洗い出すのが、費目別計算のイメージです。
費用を大きく分けると
・材料費
・労務費
・経費
の3つがあります。これを「形態別分類」と呼びます。
ちなみに、原価計算の中での費目別計算の位置づけについては、前回の記事をご覧になってみてください。
費目別計算の全体像
費目別計算は、以下の3ステップで考えていくのがシンプルだと思います。
1.支払った費用の計算
2.消費した費用の計算
3.例外の処理
では、材料費、労務費、経費ごとに3ステップをなぞっていきましょう。
材料費
支払った費用の計算
まず、製品を作るのにかかった費用を出すためには、作るのに必要な材料を買う費用から計算する必要があります。
材料の購入額は、購入対価+材料副費で計算されます。
購入対価とは何か?その材料の値段です。購入対価は送状価額-値引・割戻で計算されます。
送状価額って何?という話ですが「定価」のことだと捉えて構いません。
要は、定価-値引が購入対価で、材料の値段ですよー、というだけの話です。
ちなみに値引・割戻・割引の違いは
値引:品質不良などによる減額のことで、キズもの半額、というイメージです。
割戻:ボリュームディスカウントのことで、まとめ買いオトク、というイメージです。
割引:早く購入することによる減額のことで、今買えば手数料がオトク、みたいなイメージです。
このうち、割引は、時間的なディスカウントなので、どっちかというと利息と似たようなカテゴリだよね、という考え方になり、利息と同じ営業外損益(つまり、非原価)になります。
値引・割戻は、上記の通り、送状価額からマイナスします。
ただし、材料を消費してしまった後に値引・割戻の事実が判明した場合、当期の同じ種類の材料の購入原価からマイナスしてお茶を濁します。
どの材料に値引・割戻が入ったのか分からない場合は、当期の材料副費からマイナスしてお茶を濁します。
現場で材料を買う側と、管理している側は必ずしも一緒ではないですから、こういったこともあるのです。
では材料副費とはなにか。これは材料が出庫(消費)されるまでにかかったその他もろもろの費用のことで、外部副費と内部副費に分かれます。
外部副費というのは、購入してから自社に届くまでの費用のことで、外部に支払う費用と捉えて構いません。これは全て購入原価に含まれます。
例を挙げると、買入手数料、引取運賃、荷役費、保険料、関税です。カイトリニホカン、と覚えた気がします。保管費は外部副費ではないので注意。
内部副費は、自社倉庫から出庫されるまでの費用で、検収費とか整理費とか、内部的な費用になります。外部副費以外は内部副費、と捉えて構いません。
内部副費は会社のルールによって、全て購入原価に含まれるケース、全て含まれないケース、一部含まれるケースがあります。
含まれなかったものは、間接経費になるか、全て当期消費した材料費(つまり、期末材料として残らない!)として扱われます。
消費した費用の計算
支払った費用の計算を行ったら、当期に消費した費用を計算します。
差し引きの残りは、期末の材料となります。
パターンは二つあって、重要性の高い材料か、そうでないかです。(このあたりは試験で指示があるのでご安心を)
重要性の高い材料は、消費価格×消費数量で計算します。
消費数量の測定は、継続記録法か棚卸計算法という方法があるのですが、原則は継続記録法です。
要は、いちいち在庫の出たり入ったりを記録するのが継続記録法、在庫の受入と、期末時の棚卸だけ記録し、差し引きの残りを消費量とするのが棚卸計算法です。
棚卸計算法には、計算が早くてラクというメリットがありますが、期末一発で、消費量を仮定で算出するので、原価管理(材料の管理)にはあまり向いていないというデメリットもあります。
例外の処理
在庫を保管していると、ダメになってしまうものもあります。それが棚卸減耗というやつです。
棚卸減耗費は、原因によって処理を分けます。
正常な原因(=まあ、普通に起こりえるもの)によるものは間接経費、異常な原因(=あんまり起こらないもの。火事とか)によるものは非原価になります。非原価とは特別損失や営業外費用です。
間接経費といわれてもピンとこないので、間接費になる、そして、どの材料にかかった費用か分からないので、経費(材料費でも労務費でもない費用)に混ぜてお茶を濁す、とひとまず抑えておきましょう。
労務費
支払った費用の計算
労務費はほぼイコール人件費なので、時給×時間数で計算と考えて問題ありません。
ただし、アルバイト代が翌月に振り込まれるように、支払った費用と消費した費用は違います。
12月分の労務費が、1月に支払われたりするのがオーソドックスなのです。
さて、支払った労務費は、賃金+加給金で計算されます。
賃金は賃率(時給)×就業時間です。
加給金は、各種手当のことです。
なお、ここでは直接・間接の区別は不要です。いくら支払ったかが計算できればいいのです。
消費した費用の計算
ここでは、原価を測定するために、直接費か間接費かを分類する必要があります。
そこで、直接工と間接工それぞれで計算します。
直接工というのは製品Aを作っている工員さんと捉えればよいでしょう。
間接工は、製品A,B,C全てに使うネジを作っている工員さんと捉えてみましょう。
パートや事務職員さんの給料や、退職給付、福利費などは、間接工と同じで間接費に入ります。何故なら、製品に対して直接費用を関連付けるのが難しい費用だからです。
※ただし、福利施設負担額、厚生費などはそもそも労務費でなく経費になります。何故なら、人に対してかかった費用として関連付けるのが難しいからです。(一人当たりいくらかかった、とか)
引っ掛け問題にありがちですね。
話が横道に逸れましたが、直接工の計算をします。
直接工といっても、全て製品Aについての作業をしているわけではありません。
間接・手待ち時間と呼ばれるような時間は、間接労務費になります。
ポイントは、直接工には直接作業時間と間接作業時間があるということです。
計算は、賃率×作業時間であり、変わりません。
なお、賃率には工場全体で同じ賃率を取るのか、職種によって分けるのか、人によって分けるのか、など様々なやり方があります。
このあたりの粒度は、原価管理上のメリットと、その賃率を運用するコストの兼ね合いで決められます。管理会計のポイントは、こうしたコストとメリットの比較衡量にあります。
次に間接工は、全て間接労務費になります。
計算自体は、直接工の方法と変わりません。
例外の処理
間接労務費を集計した後、部門別計算などに移行する際に存在を忘れないようにしましょう。
経費
経費は3ステップのうち、2.消費した費用の計算 だけ考えればいいです。
経費には4パターンあって、支払経費、月割経費、発生経費、測定経費です。
支払経費は旅費交通費など。前払や未払があるようなもの。これは、ボックスを使って、前払と未払を差し引きして、当期に消費した費用を求めればOKです。
月割経費は減価償却費など、毎月定額発生するもの。年間発生額を月で案分すればOKです。
発生経費は棚卸減耗費など、発生した費用がそのまま消費した費用になるもの。
測定経費は水道光熱費など、メーター測定するもの。基本料金+従量課金という計算になります。
さてさて、費目別計算で、材料費・労務費・経費の計算方法を見てきました。
これで、いつ・なにが・いくらかかったのかを測定することができました。
やっと、製品の原価を計算する基礎が整ったことになります。
アラアラですが、割と網羅的かつ試験で使えるレベルの内容になったかと思います…
次回は製造間接費の計算の概要をさらっと説明したあとに、部門別計算に移ります。
他にも、このサイトでは、普段
私が社会人で働きながら会計士試験に合格した経験から
社会人が働きながら会計士試験に合格するための記事や
社会人の働きながら公認会計士試験攻略法:論文では記述を得意にする【論文で得点力を上げる勉強法】
会計士試験がつらい・諦めようと考えている方へ【働きながら受験】
監査だけでなく、コンサルでの経験から
監査法人やコンサルに入ってからの基本的なハードスキルの記事
異業種から会計士試験を目指した経験から
異業種から経理や監査法人を目指す人のための記事
を書いたりしていますので、ご興味があればご覧になってみてください。
コメント