【監査、つまらない?】アタマを使う”妄想”監査手続のススメ【バウチング】
「監査ってつまらない」と思われる方、結構いらっしゃるのではないでしょうか?
私も否定しません。
そんなあなたには”妄想”監査手続がオススメです。
今回は、アタマを使って監査を楽しくする”妄想”監査手続をご紹介します。
なぜ監査はつまらないのか?
そもそも、なぜ監査がつまらない・退屈だと言われているか?良く知らない人のためにご紹介しますね。
スタッフのうちはルーティン作業が多い
監査法人に入って1年目~4年目ぐらいの「スタッフ」と呼ばれる職位のうちは、ルーティンの作業を任せられることが多いです。
例えば
・バウチング(証憑突合)…見積書や契約書を閲覧して、金額や計上日が一致しているかの確認
・確認状発送…取引先や銀行に確認状を発送して、売掛金や預金の残高が正しいかの確認
・実査・棚卸立会…現金を数えたり、倉庫の商品を抜き打ちチェックして、現金や棚卸資産が正しくカウントされているかの確認
・当期の数値更新…会社の最新のP/LやB/Sを調書に反映する作業
・仕訳テスト…特定の条件に合致する仕訳を抽出して、不正や誤謬がないか検討する作業
・その他雑務…コピーやスキャン、製本、社内申請…
などなど。(カッコ内は、あえてルーティンっぽい表現で書いていますのであしからず)
一見すると、どれも見たり数えたりすれば分かる話なので、「誰でもできる単純作業」ですよね。
単純作業ばっかりの毎日が、監査をつまらないと感じさせる一つ目の理由です。
今回は、こちらを面白くする方法について後程書いていきます。
一年のうちにやることがだいたい決まっている
シニア以上になったらきっと楽しい?もちろんそういう面もありますが、そうではない面もあります。
監査は、〇月の〇週目にどんなことをやって、誰と打ち合わせをして…ということがほとんど決まっているのです。クライアントに何かイベント(企業の買収や重要な資産の取得、会計基準の変更などなど)が無い限り、ほぼ変わり映えのない一年を過ごします。語弊を恐れずに言うと。
そういった刺激のなさに、つまらなさを感じてしまう人が一定数います。
これについては、毎年何かしらはどこかしらのクライアントでイベントがあるもので、そうでなかったとしても、何年かに一回担当クライアントが変更になったり、監査手続を効率化したりと、実はやることが結構コロコロ変わるので、刺激がないということは実はあまりありませんが。
チェックする仕事なので、基本的に何かを主体的に作ることはあまりない
監査は文字通り「監査」なので、自分で財務諸表を作ったり、内部統制の仕組みを構築したりするわけではありません。
チェックをすることがメインの仕事なので、何かを自分たちで作り出すことはあまり多くありません。
そういった立場上の問題で、監査につまらなさを感じてしまう人もいます。
これについては、監査にも会社の新しい会計処理が正しいかどうかを考えたりする「作る」に近い側面があることに加え、希望すればアドバイザリー業務にも関わることが可能だったりと、様々な解決法があります。
さて、長々と監査のネガティブキャンペーンをしてしまいましたが、このうち一個目の「スタッフのうちのルーティン作業」を面白くするための”妄想”監査手続をご紹介します。
当たり前の話だったらすみません。
“妄想”監査手続のススメ(1):担当者が超ワル者か、超ドジだという妄想をする
決してクライアントに言ってはいけませんが、担当者が超ワルで不正しまくる人か、超ドジでミスしまくる人だという妄想をしながら監査手続をやってみると面白いです。
例えば、仕訳テスト。
よくあるのが「伝票適用欄に”不正”や”誤り”」と記載された仕訳を抽出する、という条件です。
でも、担当者がワルだったら、わざわざ伝票に”不正”と書くだろうか?”誤り”だったら、誤ったふりをしてズルして着服しそうだな。実際にありそうな案件の名前を書いたりもしそうだな…と色々と妄想を膨らませると、もっとこういう条件を追加した方がいいのではないか?と段々面白くなってきます。
担当者がドジだったら、手仕訳で桁を間違えて入力しそうだな。そういうドジを防ぐための承認フローはどうなっているのかな?などなど、妄想が膨らむとともに内部統制の理解も深まったりするわけです。
他にも確認状の発送、バウチングで承認印を見るときや、棚卸立会で怪しい在庫を見るときにも、同じことができますね。
結局のところ、手続の中で不正や誤謬を発見するというのは、ワルとドジを発見するということなのです。
“妄想”監査手続のススメ(2):担当者が資料や製品を作るまでの仕事の流れを妄想する
次に、自分が今見ている資料や製品から「それが出来るまでに担当者がどんなことをやってきたのか」を妄想します。
例えば、バウチング。備品を購入するまでに、稟議をあげて、見積をとって、契約して、納品を受けて…と色々なプロセスを経て、やっと器具備品××円/〇〇というような仕訳が計上されるわけですね。
そういった営みに想いを馳せて、担当者は契約書を読んでこう思っただろうな…とか、稟議にはこういう情報が必要なんだな…などと妄想しながらバウチングすると、全然時間内に終わりません。
適度にそういうことを考えながら進めると、時間がいくらあっても足りないぐらい楽しめるし、会社の仕組みについても詳しくなっていきます。
“妄想”監査手続のススメ(3):会社の経営者がP/LやB/Sを見て何を言うかを妄想する
最後は、会社の経営者がP/LやB/Sを見て何と言うかを妄想します。
例えば景気は引き続き好調なのにもかかわらず、前期と比べて売上が低下していたら、経営者は何が原因だと考えて、報告担当者に何と質問するでしょうか?
そう考えながら前期の数値を更新していると「勘定科目の変な増減」に気づくようになります。
景気が上がっているのに売上が低下している、逆に売上が伸びているのに売掛金は増えていない、など…
ただ会社資料をコピペして数値の更新をしているときは一瞬で作業が終わるものですが、こういうことを気にし始めると、ずっと数値を眺め続けることになります。
ちなみに取締役会では、実際に月次決算が報告されています。経営者は月次決算をチェックして、経営の状況を確認しているんですね。
これからの会計士の価値は「説明できること」
“妄想”監査手続は、つまらない監査を面白くするだけの方法ではありません。
これからの会計士のコアな価値を高めていく方法でもあると思います。
テクノロジーの発達や単価の安い人材の流入により、誰にでもできる単純作業はどんどん代替されていきます。
そう遠くないうちに、スタッフがこのような作業を実際に手を動かして行うことは少なくなるでしょう。
つまり、会計士のやっていることは会計士じゃなくてもできる、となっていくわけです。
でも、一つだけ違うことがあります。それは「その手続をする目的、手続をするときの観点、手続をして問題なかったと考えた理由」をちゃんと説明できるか、できないかです。
個人的には、プロフェッショナルの価値は「説明できること」に集約されていくのかなと個人的には考えています。
作業自体はどんどんアウトソースされていく中で、その作業を行うと決めた理由や、行った結果の結論の根拠を説明して、関係者に納得していただき合意形成にもっていく芸当は、(今のところ)機械に代替できないスキルです。
こうしたつまらない監査を面白くしていく試みから、少しずつ会計士としての強みを磨いていけるといいですね。お互い頑張りましょう!
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